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容積率100%でどう作ろう?
今回の物件は、目黒区の高級住宅街の一角にある2棟現場となります。A棟・B棟の共通項として「容積率100%の中で、限られた面積を使用していかに空間を広く見せるか」をコンセプトに計画を進めました。どちらの棟も容積に含まれない外部空間(吹き抜けやバルコニー等)を各所に取り入れ、机上では図れない体感的な空間の広がりを意識して計画しました。
プランニング
北東角地の敷地で、北側道路の1番高いところで現況地盤面まで1.0m以上の高低差がありました。A棟は角地、B棟は北側道路の接道となり、敷地条件を考えるとB棟の計画が肝になると感じました。周囲の建物は1つ1つの敷地が大きく一見して面構えの違う家々が立ち並んでいて、高級住宅街の一角を計画することになると戦々恐々としておりました。建物のプランニングだけでなく、外構計画も並行してイメージしながら検討する必要があると思いましたね。
設計の初期段階でA棟・B棟ともに2階建てと3階建てのプランを企画していましたが、3階建てにすることで1層目の外部空間を広くできること、各層でバルコニーやテラスといった外部空間を使用し床面積に参入しないエリアを計画することができたため、3階建て案を軸にプランをまとめていきました。2階建てよりも壁の量や建物の高さが1層分増すのでコストアップには繋がりましたが、結果的に床面積以上の広さを感じられる空間構成になったと感じました。
外構
【A棟】
角地の物件で周囲の高級物件に負けないような存在感を出したかったので、極力窓を抑えて写真のような壁で覆われた外観を計画するようにしました。1・2層の北東面の壁は目地入りの左官塗装仕上げとなっています。
外構は1.7m程の高さがある門扉を付けることでプライバシーを守り、かつ重厚感を演出しています。今回、地区計画の規定で塀については1.5m以上連続した壁を作ることができないという制限があったため、0.8m幅の塀から先にはアルミの柱を囲いとして作りました。そして、東側道路面には四季折々の移ろいを感じることができる植栽帯を設けました。
【B棟】
A棟とは違う色味で重厚感を出すために車庫奥の壁はブラックトーンのタイルを総貼りとしました。車庫は高さ3.1m、有効幅3.4mもあり、軽2台やキャンピングカーも置ける空間になっています。A棟は角地でどうしても目立ってしまう中で、B棟がそれに負けてしまうということのないように意識しました。車庫空間の広いB棟の個性を上げるために様々なメーカーの商品を組み合わせた造作塀やノルウェー産の石英石を使用するなど、外構計画や素材については特にこだわりました。
外部のアプローチには御影石の平板を使用
足元灯として平板の下にライン照明を設置しました
アプローチにはノルウェー産の石英石を使い、高級感を演出
床面積・空間の広がり
冒頭でもお伝えしましたが、今回の物件は容積率100%の条件で床面積が延ばせないため、「いかに建物の空間を広く感じさせるか」に焦点を当てました。リビングと続き間のようなバルコニー空間は、A・B棟ともに床面積以上の広さを演出することができたと思います。
【A棟】
▪玄関
車庫を北東の角、玄関の入口を東道路の南側に配置しました。当初は、車庫と玄関を北側に並べた形を計画していましたが(下図参照)、東側道路面にお風呂や居室の窓が来てしまい生活感が出てしまうこと、外構門扉を付けたい、車庫から玄関部分にアクセスしたい、などなど改善したい点が多かったことから現在のプランになりました。角地ならではの玄関配置となりましたが、ポーチの段数も抑えられ、玄関を入って見上げると吹き抜け空間に到達するゾーニングにできたのは幸いでした。
吹き抜け空間にすることで床面積に含まれないようにしていて、かつ意匠も兼ねて計画しています。
▪1階 水回り
床面積の調整で各階に外部空間を広く取ることができたことで、このようなテラス空間が生まれました。浴室・洗面所・テラスという並びでゾーニングすることができたので、テラス利用の提案として弊社で初の試みとなる無煙テントサウナ「イエサウナ」を導入しました。サウナ後は浴室で水風呂→テラスで外気浴をして”整う”という流れもここで完結できます。引き違いの窓が外から見えないよう建物の壁を伸ばして、窓が隠れるようにしています。
▪2階 分断LDK
A棟は分断スタイルのLDKとなっています。リビングは18畳のバルコニーがあることで実際の大きさよりも広く感じます。お子さんも思いっきり走り回れるし、水道も付いているのでここにサウナを置くのもいいですね。(イエサウナは簡単に組み立てができるので移動も可能です)分断されたダイニング・キッチンもバルコニーや窓、ガラスを介して空間のつながりを感じ取れるよう配慮しました。
【B棟】
▪1階 主寝室
アイネストの物件の中では7.1畳と比較的小ぶりな主寝室になりますが、床面積が算入されない奥行きでテラス部分を計画。このちょっとした奥行きがあるだけで広く見えるので不思議です。
▪2階 LDK
外観・外構計画は黒く重い印象でインパクトを与える構成にしましたが、室内に関しては住まう方がリラックスできる空間にしたかったのでグレーとオークの床材を基調に温かみのある色を採用しました。A棟と同じように南北にバルコニーやダイニングに出窓を設けることで、こちらも床面積に含まれない部分への工夫を凝らしています。
景観を重視して2方向から持ってきた北向きL字バルコニー
日が当たり高さもあるので洗濯物を干すのに最適な南向きバルコニー
ダイニングの出窓
▪3階 2部屋+バルコニー
B棟は空間を広く見せるために2階に2つ、3階に1つとバルコニーを沢山作りました。3階のバルコニーは階段を上がった時に空間の広がりを感じられるよう、あえて正面に持ってきています。
▪ロフト
ロフト部分も階段直通で行ける構成にしました。ハシゴではなく階段なのもアイネスト物件の特徴の1つですね。床面積の参入対象にならないうえに、室内空間として十分な広さを確保することができたのではないでしょうか。
【Story₋02 高低差をどう活かそう?】の物件よりも敷地全体の高低差は抑えられていたものの、同じくらい大変な物件でした。A棟・B棟の建物の存在感と外構計画の仕上がり等、完成した物件を見て本当に頑張ってよかったと感じました。外構計画は、現場の大小問わずお客様が最初に見る視覚的情報の一部分となるので、建物の価値を高める要素として常々こだわりたいと思っています。色々な天然石を使えたのも本当に嬉しかったです。この物件は今まで得た経験と知識をフルに投入して臨むことができたので、仕上がりにはとても満足しています。
子育て奮闘中。趣味は音楽で、自宅には防音室を完備。